- 2020-4-22
- 転職体験談・コラム
はじめに
こんにちは、Shinと申します。普段は戦略コンサルタントという仕事をしながら、たまに採用活動に関わったり、Outward Matrixというブログを書いたりしています。
コンサルティングファームでは、一般的に人事の力はそこまで強くなく、現役のコンサルタントが面接を実施することが多いです。私が今働いているファームでも同様で、私のような未熟者にも、「面接官をやってくれ」という依頼がときたまきます。もちろん一定の面接プロシージャのようなものはあるものの、そこでの合否は基本的に面接官に委ねられています。
コンサルタントがOKといえば通るし、そこでNGであればお祈りされるという、ある意味非常にシンプルな構図となっています。
残念ながら選考を通過できないタイプの人
少し前に中途の方の面接を実施したことがあるのですが、そのときは残念ながらご縁がなかった旨のご連絡を差し上げました。学歴や職歴などには問題がなく、非常に能力値が高いことは伝わってきたのですが、それでもお断りせざるを得なかったのです。なぜか。
それは非常に単純な話で、その方は現在のお仕事で全力を発揮することなく、「あまり評価されない」「もっと活躍できる職場に行きたい」と考えていることが伺えたからです。
- 30になるまえに、グローバルな環境で働いてみたい
- 今の環境でいくらがんばっても、将来のためになるようなスキルを得られるとは到底思えない
- 苦労したことは特にない。そんなに必死に苦労するような仕事は与えられてこなかった
ひとつひとつの理由は、それなりに納得できるような気がしないでもないです。しかし、面接を進めていくうちに、彼は上記の要望をかなえるために必死に努力してきたわけではないことがわかってきたのです。
彼の現職は、もしグローバルな環境で働いてみたいのならばいくらでもそのチャンスがある環境です。海外支社も多く、ある一定の基準(英語力や評価など)を満たせば、そこへの転勤が高い確率で認められるような会社でした。しかしながら、彼はそこには達しておらず、海外勤務が難しいという状況のようでした。
私は、「そういう話でしたら、現職でもその評価基準を満たした後に、海外転勤を狙うというオプションもあるのではないでしょうか」と提案差し上げたのですが、「そんな時間を使うぐらいだったら、転職をして最初からグローバルな環境で働きたい」とおっしゃっていました。
また、ある程度社会経験を積んでいるのならば、誰しも壁にぶつかった経験、苦労した経験があるはずです。そういうものがないということは、自分の能力以上の仕事をやったことがないという証明になってしまいます。
もちろん、その方が非常に優秀で、どんな仕事もさくさくこなせてしまうタイプであるということなのかもしれません。しかし、もしそうだとしても、彼はさらに高いレベルの仕事を求め、自分から仕事を取りにいかなければなりません。そうしなければ、いつまでも自分の力は現状と変わらず、停滞したままとなってしまいます。
彼は、コンサルティングファームにいくことで多くの経験を積み、グローバルな環境で活躍できるビジネスパーソンになりたいという志望動機を持っていました。それ自体は素晴らしいことですが、残念ながら現在時点の考え方では、だいぶ時間がかかってしまうであろうことは容易に想像ができました。
「自分は今の環境で全力を尽くしただろうか?」
「転職」というのは非常に甘美な響きです。転職すれば、給料も一気に上がり、グローバルな環境で働くことができ、自分の市場価値も一気に上がる、そういう幻想を抱いてしまう気持ちもよくわかります。そして、それはウソではありません。ぼくの友人たちも、上記のようなキラキラ転職を果たした人は何人もいます。
しかしながら、転職活動をしても箸にも棒にもかからなかったり、転職できても前より不幸になってしまった、そういう人も少なくありません。
彼らの違いはどこにあるのか。もちろんケースバイケースなので一概には言えませんが、あえていうと、「現職で全力をつくしていたかどうか」というところに尽きるとぼくは考えています。
最初に入った会社で、自分の希望通りの仕事ができなかったとしましょう。残念ながら、現在の日本の新卒就職スタイルではよくあることです。そのときに、「おれはこんなことやりたいわけじゃなかったのに。ホントこの会社おわってるな」と思い、毎日腐りながら仕事をしている人と、「最初に希望している会社じゃなかったけれど、とにかく一生懸命やって会社や世の中のためになろう!」と前向きにがんばれる人、どちらのほうが人材としての価値が高いでしょうか?
これは、明らかに後者の人材のほうが価値が高いといえます。たとえ最初の時点でのスキルが高くなかったとしても、こういう前向きな姿勢があれば、いくらでもチャンスを掴み取ることができます。そして、その結果いろんな経験をつみ、どんどんいろんな力をつけていきます。その結果仕事も楽しくなっていって、さらに努力するという最高のスパイラルに入ることができます。
もしあなたが今転職を考えているとしたら、この質問を自らに問いかけてみてください。
「自分は今の環境で全力を尽くしただろうか?」
もしこの質問に対して、自信を持って「YES」と言い切れるのであれば、あなたはすぐに転職したほうがいいでしょう。必死に努力し、前向きにがんばり、さまざまな経験値をつんだにも関わらず、あなたにチャンスや良い待遇を与えてくれない会社には、どのみち将来はありません。もしくは、あなたの目指す方向性と会社のそれが全然一致しておらず、どうやっても認めてもらえないようなシステムになっているのかもしれません。どのみち、転職したほうがお互いのためです。
しかしながら、もしあなたの答えがNoだったら、まだ転職するのは早いです。今やっている仕事が簡単すぎるのだったら、そんな仕事は午前中で終わらせて、上司の仕事をガンガンに巻き取っていきましょう。確かに、そんなことをしても目先の給料は変わらないかもしれません。「なんで自分だけこんな苦労をしないといけないんだ・・・」と嘆くこともあるかもしれません。しかしながら、自分の仕事を完璧に終わらせた上で上司の仕事まで巻き取り、会社に貢献しまくる人材のことをほうっておく会社などほとんどありません。あなたの発言力はどんどん高まり、仕事も楽しくなっていくでしょう。
また、「グローバルで働きたい」「経営企画をしてみたい」など、あなたが今もっている希望も通りやすくなっているはずです。そこまでしたあなたは、先ほどの質問に自信を持って「YES」と答えられる人材になっているはず。その経験をもってする転職活動は、全力を尽くす前に実施していたそれと比べ、格段に実りあるものとなります。
小手先に頼らず、最高のキャリアを目指そう
小手先の転職スキルをつけたところで、得られるキャリアというのはタカが知れています。きれいな職務経歴書、美辞麗句で飾る面接の受け答え・・・そんなものをいくらこなしていっても、本質的な力にはなっていません。
自分が今おかれた場所で必死に努力し、望む環境に飛び込み、そこでさらに自分を伸ばしていく。最高のキャリアというのは、その繰り返しの末に手に入るものなのではないでしょうか。
転職を志すみなさん、ぜひがんばってください。またその際は、「自分は今の環境で全力を尽くしただろうか?」と自らに問いかけることを忘れないでください。応援しています。
著者プロフィール
Shin
戦略コンサルタント。主に仕事やキャリアに関するオピニオンをブログ「Outward Matrix」で執筆中。コンサルタントとして働き始めた当初、仕事がまったくうまくいかず、ドロップアウト寸前にまで陥った経験から、「どうすれば仕事がうまくいくのか」「どのような姿勢、スキルをつけるべきなのか」と日々考え、実践中。
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